ホテル経営において大切な指標のひとつとして、利益率が挙げられます。今回は、ホテル経営における利益率について基本的な考え方から計算方法、平均的な水準、改善のポイントまでを分かりやすく解説します。宿泊施設の開業を検討している方や現在の運営方法に不安を感じている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
利益率の種類と計算方法について
ホテル経営における利益率とは、売上高に対してどれだけの利益を残せたかを示す割合で、経営の健全性を判断する基本指標です。計算式は利益÷売上高×100で求められ、資金繰りの安定や再投資の可否を判断するうえでも欠かせません。
宿泊業は建物維持費や人件費など固定費の比率が高く、客室稼働率や宿泊単価の変動が利益率に直結しやすい特徴があります。利益率を正しく把握するのは、自社の現状を見直す第一歩です。利益率には、複数種類があります。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、営業活動によって得られた利益が売上高の何%にあたるかを示す指標です。営業利益は売上総利益から人件費や販売費、管理費などの営業コストを差し引いて算出します。同じ売上高でもコスト管理が徹底されているホテルは営業利益が大きく、利益率も高まります。売上高営業利益率を定期的に確認することで、価格設定の妥当性やコスト配分の適正さを把握可能です。
売上高総利益率・経常利益率
さらに売上高総利益率(粗利率)と経常利益率を組み合わせれば、収益状況を多角的に把握できます。売上高総利益率は原価や仕入れを差し引いた基本的な収益力を示し、飲食部門や清掃などサービス提供に直結するコスト効率の評価に有効です。一方、経常利益率は利息や為替差益など本業以外の要素も含めた総合的な収益力を示し、金融コストの負担や資金調達の健全性の確認にも役立ちます。
宿泊施設が目指すべき利益率の水準
ホテルの利益率は、業界平均や自社のホテルタイプに応じて目標水準を設定するのが重要です。業界全体の営業利益率はおおむね10%前後とされ、自社の収益構造を評価する基準として活用できます。ただし、景気や社会的要因によって変動するため、あくまで平時の目安と考える必要があります。
利益率が大きく下回る場合は、コスト削減や客室単価の見直しなどの改善策を早期に検討すべきです。逆に基準を上回れば、安定した経営体制が築けていると判断できます。
業態・立地ごとの利益率の目安
ホテルの利益率は業態や立地によっても大きく異なります。出張需要を中心に安定した稼働率が期待できるビジネスホテルは約10〜12%と比較的高めの利益率が見込めます。
リゾートホテルは客単価は高いものの、季節変動や繁閑差が大きく、利益率は約8〜10%とやや低めです。シティホテルは宿泊だけでなく飲食や宴会収益も含まれるため、約9〜11%の範囲でバランス管理が重要となります。
旅館も約9〜11%で、老舗ブランド力は強みですが、老朽化や人手不足への対策が求められます。民泊は固定費が少なく、約10~30%、場合によっては40%を超える高利益率を狙える業態です。
さらに、グランピングは効率的な設備投資と変動費管理により、約30〜50%と高収益を実現しやすいモデルといえます。自社のホテルタイプに応じた現実的な目標利益率を設定すれば、収益改善や戦略立案の指針となり、立地条件や顧客層、競合状況も踏まえた運営判断が可能になります。
ホテルの利益率を高める施策
ホテルの利益率を高めるためには、売上を拡大する施策と、コストを抑えて利益を守る施策の両面から取り組む必要があります。
売上を拡大する施策
需要に応じて柔軟に価格を変えるダイナミックプライシングの導入や体験型プラン・地域とのコラボ企画など付加価値の提供によって客室単価を上げる方法があります。また、宿泊以外の利用をうながすアップセル・クロスセルにより、顧客ひとりあたりの単価を引き上げられます。
さらに、OTAに依存せず自社公式サイトからの直接予約を増やす集客体制やSNSや動画配信によるブランド力向上によって稼働率を高める戦略も有効です。加えて、顧客満足度を高め、会員制度やメールマガジンなどを通じてリピーターを育成すると、安定的な収益確保につながります。
利益を守る施策
利益を守る施策では、無駄をなくし利益を確保する必要があります。まず、PMSやサイトコントローラー、スマートチェックインなどのDXを活用した業務効率化によって人件費を最適化する方法が有効です。次に、飲食部門では需要予測にもとづく仕入れや原価管理、光熱費の削減、省エネ設備の導入、アメニティやリネンサプライの契約見直しなどを通じて変動費を徹底的に抑えられます。
無駄を省くと、短期的にも利益率の改善効果を得やすくなります。さらに、清掃や設備管理などの業務において、内製化と外部委託のバランスを適切に判断するのも利益率向上に直結します。
まとめ
ホテル経営において重要な指標のひとつである利益率は、売上に対してどれだけ利益を残せるかを示す割合で、経営の健全性や戦略立案に欠かせません。本記事では、売上高営業利益率、売上高総利益率、経常利益率など複数の指標を用いた収益状況の把握方法や業界平均・ホテルタイプ別の目標水準を解説しました。さらに利益率向上の具体策として、客室単価向上やアップセル・クロスセル、稼働率改善、リピーター育成などの売上を拡大する施策と、DX導入や変動費管理、内製化と外部委託の最適化などの利益を守る施策を紹介しました。ふたつの施策により、収益改善や安定経営への実践的な指針が得られることでしょう。
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